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町工場が支える日常

この町の日常は、町工場のシャッターが上がる音から始まる。大通りから一本入った細い路地の先。そこに、長い時間この町を支えてきた町工場がある。朝になると、金属を叩く音や機械の回る低い響きが、家々の間を抜けて聞こえてくる。それは騒音ではなく、地元の人にとっては聞き慣れた生活音だ。この音が聞こえると、「今日もいつもの一日が始まった」と感じる。

町工場の多くは、大きな看板を出していない。何を作っているのか、外からはわからない工場も少なくない。けれど、その中では、暮らしや産業を支える部品や道具が、黙々と作られている。一つひとつの仕事は小さく見えるかもしれない。だが、その一つが欠ければ、どこかで困る人が出てくる。町工場は、そんな「目立たないけれど欠かせない仕事」を積み重ねてきた。昼休みになると、作業着のまま工場の前で一息つく人がいる。シャッターの影で弁当を広げたり、短い休憩を取ったりする姿は、この町では当たり前の風景だ。

ツアーで訪れることは少ない町工場も多い。安全や仕事の都合で、誰にでも見せられる場所ではない。それでも、シャッターの隙間から見える職人の背中には、長年積み重ねてきた時間と技術がにじんでいる。この町のものづくりは、大きな工場一つで成り立っているわけではない。小さな町工場が点のように存在し、それぞれが役割を持ち、つながり合っている。その積み重ねが、この町の産業と日常を形づくってきた。

町工場は、特別な存在ではない。けれど、なくてはならない存在だ。生活のすぐ隣で、今日も変わらず、町の時間を動かしている。シャッターの向こう側で、誰かの一日が、誰かの仕事が、誰かの暮らしが支えられている。町工場があるから、この町の日常は続いていく。

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